今回は、ボートレース公式サイトに掲載されているチルトに着目し、チルトの値ごとに実際の着順がどのように分布しているのかを集計してみました。
対象は、2026年1月1日から2026年5月31日までのレースデータです。
チルトといえば、一般には「伸びをつける調整」「一発を狙う調整」といった印象を持たれやすい項目です。では、実際の着順統計で見ると、チルトを上げた艇は好成績を残しているのでしょうか。
チルトとは何か
チルトとは、ボートに取り付けられているモーターの角度調整を表す数値です。
一般的には、チルトを上げると伸び寄り、チルトを下げると出足・回り足寄りになる、といった説明をされることが多いようです。
ただし、ここで注意したいのは、チルトは単独で速さを決める魔法の数字ではないという点です。
選手、モーター、ボート、プロペラ、コース、水面状況など、さまざまな要素の中で選択される調整値のひとつです。したがって、今回の集計も「チルトを変えたから着順がこうなった」と断定するものではありません。
あくまで、実際にそのチルトで出走した艇の着順が、どのように分布していたかを見るものです。
全体集計:チルト別の着順割合
まずは、2026年1月から5月までの全体集計です。
| チルト | 件数 | 1着率 | 2着率 | 3着率 | 4着率 | 5着率 | 6着率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| -0.5 | 73,256 | 17.73% | 17.76% | 17.28% | 16.27% | 16.34% | 14.61% |
| 0.0 | 56,677 | 16.51% | 16.32% | 16.71% | 17.42% | 16.99% | 16.05% |
| 0.5 | 5,188 | 13.20% | 13.70% | 15.69% | 18.56% | 17.42% | 21.41% |
| 1.0 | 774 | 9.56% | 12.53% | 12.79% | 20.54% | 17.57% | 27.00% |
| 1.5 | 226 | 1.77% | 6.64% | 9.29% | 15.93% | 17.26% | 49.12% |
| 2.0 | 193 | 5.70% | 5.70% | 5.18% | 14.51% | 23.32% | 45.60% |
| 2.5 | 11 | 9.09% | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 18.18% | 72.73% |
| 3.0 | 516 | 2.52% | 7.95% | 12.21% | 18.99% | 21.71% | 36.63% |
こうして見ると、少し意外な結果になりました。
チルトを上げるほど勝てる、という結果にはなっていません。むしろ全体としては、チルトが高くなるほど1着率は下がり、6着率が上がる傾向が見えます。
低チルトは比較的安定している
最も件数が多いのは、チルト-0.5です。
このチルトでは、1着率が17.73%、2着率が17.76%、3着率が17.28%となっており、上位着順の割合が比較的高く出ています。
また、6着率は14.61%で、今回の主要なチルト値の中では低めです。
チルト0.0も、全体としては大きく崩れている印象はありません。1着率は16.51%、6着率は16.05%で、ほぼ標準的な分布に近い形です。
このあたりまでは、極端な一発狙いというより、比較的標準的な調整として使われている印象を受けます。
0.5以上から下位着順が増え始める
変化が見え始めるのは、チルト0.5あたりからです。
チルト0.5では、1着率が13.20%まで下がり、6着率は21.41%まで上がっています。
さらにチルト1.0では、1着率が9.56%、6着率が27.00%です。
もちろん、チルト1.0以上は件数が少なくなるため、単純比較には注意が必要です。それでも、全体の傾向としては、チルトが高くなるほど上位よりも下位に寄っていくように見えます。
高チルトは「勝負気配」なのか
ここが、今回一番おもしろいところです。
チルトを上げるという行為だけを見ると、何となく「攻めている」「伸びを狙っている」「一発がありそう」と感じてしまいます。
しかし、統計上はその印象とは逆に、高チルトほど下位着順の割合が高いという結果になりました。
これは、選手がチルトの効果を知らずに調整しているという話ではないと思います。むしろ、選手は十分に分かった上で、あえてその調整を選んでいるはずです。
では、なぜ高チルトが選ばれるのでしょうか。
おそらく、標準的な調整では足りないと判断したとき、あるいは伸びに寄せて突破口を探したいときなど、何らかの事情がある場面で選ばれやすいのではないでしょうか。
つまり、高チルトは単純な「好調サイン」というより、何かを変えにいっているサインとして見る方が自然かもしれません。
高チルトはロマンもあるが、リスクも大きい
今回の集計だけを見るなら、高チルトを見て「これは伸びるから買い」と短絡的に判断するのは危険そうです。
特にチルト1.5以上では、件数こそ少ないものの、6着率がかなり高く出ています。
チルト1.5では6着率が49.12%、チルト2.0では45.60%、チルト3.0でも36.63%でした。
これを見る限り、高チルトは「一発の可能性がある調整」というよりも、少なくとも統計上は、下位に沈むリスクがかなり高い調整として表れています。
もちろん、実際の予想では、展示気配、進入、スタート展示、選手の特徴、水面状況などと合わせて見る必要があります。
ただ、チルトの数字だけを見てプラス材料と受け取るのは、少し危ういように思います。
チルト単独ではなく「選ばれ方」を見るべきかもしれない
今回の結果で特に感じたのは、チルトは単独の性能指標というより、その艇がどういう事情でその調整を選んだのかを見るべき項目かもしれない、ということです。
たとえば、同じチルト0.5でも、ある選手にとっては自然な調整かもしれませんし、別の選手にとっては苦しまぎれの調整かもしれません。
また、モーターやボート本体によっても、選ばれやすいチルトに傾向がある可能性があります。
もし特定のモーター番号で高チルトが選ばれやすい、あるいは特定のボート番号で低チルトに寄りやすい、といった傾向があるなら、チルトの見方はもう少し深くなりそうです。
単純に「チルトが高いか低いか」ではなく、
- その選手は普段からそのチルトを使うのか
- そのモーターでは高チルトが多いのか
- そのボートでは低チルトに寄りやすいのか
- 場や水面状況によってチルト選択が変わるのか
- チルト変更後に着順が改善しているのか
といった見方をしていくと、次の研究テーマとしてかなり面白そうです。
今回のまとめ
今回のチルト別着順統計では、次のような傾向が見えました。
- チルト-0.5は、上位着順の割合が比較的高く、6着率も低めだった
- チルト0.0は、標準的な分布に近い結果だった
- チルト0.5以上になると、1着率が下がり、6着率が上がる傾向が見えた
- 高チルトは「勝負気配」というより、統計上は下位着順のリスクが高い調整として表れた
- ただし、チルト単独の効果ではなく、選手・モーター・ボート・水面状況などを含んだ結果として見る必要がある
チルトは、数字だけを見ると分かりやすそうで、実はなかなか難しい項目です。
「高いから伸びる」「低いから堅い」と単純に決めるのではなく、なぜそのチルトが選ばれているのかを考える方が、実戦的な見方に近いのかもしれません。
今回の結果を見る限り、少なくとも「チルトを上げれば勝てる」という単純な話ではなさそうです。
集計データについて
今回の集計結果は、以下のExcelファイルにまとめています。
集計期間は、2026年1月1日から2026年5月31日までです。
なお、本記事は過去データをもとにした集計結果であり、今後のレース結果や舟券成績を保証するものではありません。実際の予想では、展示気配、進入、スタート、選手、モーター、ボート、水面状況などもあわせてご判断ください。

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