チルト研究の入口は、機材ではなく水面だった
今回は、ボートNo・モーターNoごとのチルト傾向を調べるつもりで、昨日までの1年間のデータを集計してみました。
当初の関心は、かなり素朴なものでした。
- 特定のボートは、チルトを上げられやすいのか?
- 特定のモーターは、チルトを上げられやすいのか?
- 機材ごとに、チルトの“癖”のようなものがあるのか?
つまり、ボートやモーターという「機材の個体差」に注目していたわけです。
ところが、実際に集計してみると、最初に見えてきたのは機材の癖ではありませんでした。
それ以上に強く表れていたのは、開催場ごとの違いでした。
まず全体では、チルトは -0.5 と 0 が大半
今回の集計対象は、ボートNo別・モーターNo別ともに、合計で 330,114件 です。
全体のチルト分布を見ると、次のようになりました。
| チルト | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| -0.5 | 171,804 | 52.04% |
| 0 | 141,010 | 42.72% |
| 0.5 | 13,074 | 3.96% |
| 1.0 | 2,061 | 0.62% |
| 1.5 | 520 | 0.16% |
| 2.0 | 445 | 0.13% |
| 2.5 | 33 | 0.01% |
| 3.0 | 1,167 | 0.35% |
こうして見ると、チルトの基本形はかなりはっきりしています。
-0.5 と 0 だけで、全体の約94.76%を占めています。
つまり、チルト0.5以上は少数派です。さらに、2.0以上となるとかなり特殊な設定と言えます。
ここまでは、ある程度想像通りでした。
しかし、開催場別に分けてみると、様子が一気に変わります。
開催場別に見ると、チルト傾向は大きく違う
チルト0.5以上の割合を開催場別に見ると、かなり大きな差が出ました。
| 開催場 | 件数 | チルト0.5以上率 | 平均チルト |
|---|---|---|---|
| 江戸川 | 12,684 | 64.94% | +0.398 |
| びわこ | 13,788 | 9.28% | -0.092 |
| 大村 | 14,772 | 6.53% | -0.078 |
| 津 | 13,758 | 3.92% | -0.156 |
| 鳴門 | 13,218 | 3.37% | -0.198 |
| 桐生 | 14,322 | 1.61% | -0.301 |
| 戸田 | 13,320 | 1.09% | -0.346 |
| 住之江 | 14,544 | 0.88% | -0.407 |
特に目立つのは、やはり 江戸川 です。
江戸川では、チルト0.5以上の割合が 64.94% ありました。
一方で、住之江は 0.88%、戸田は 1.09%、桐生は 1.61% です。
同じボートレースでも、ここまで違います。
これは、単なる機材差というより、開催場ごとの水面特性、運用傾向、選手の調整判断などが強く関係していると考えた方が自然です。
江戸川を混ぜると、全国集計の印象が大きく変わる
ここで注意したいのは、全国集計の見方です。
全国のデータをそのまままとめると、江戸川のように高チルトが多い場の影響を強く受けます。
その結果、次のような誤解が起きる可能性があります。
- 高チルトを使いやすいボートがある
- 高チルトを使いやすいモーターがある
- チルトは機材ごとの癖で決まっている
もちろん、機材ごとの差がまったく無いとは言い切れません。
しかし、今回の集計を見る限り、まず最初に見るべきなのは、ボートNoやモーターNoではなく、開催場ごとのチルト傾向 です。
極端に言えば、同じ「チルト0.5以上」でも、江戸川での0.5以上と、住之江での0.5以上では、意味合いが違う可能性があります。
チルトは、機材の癖だけでは語れない
今回の研究を始める前は、ボートNoやモーターNoごとに、何らかのチルト傾向が見えるのではないかと考えていました。
たとえば、特定のモーターは伸び型に仕上げられやすく、チルトを上げられやすいのではないか。
あるいは、特定のボートはチルトを上げたときに扱いやすいのではないか。
そうした機材個体ごとの癖を探すつもりでした。
しかし、実際にはその前段階として、もっと大きな差が見えました。
チルト傾向は、まず開催場によって大きく変わります。
これは、今後のチルト研究にとってかなり重要です。
なぜなら、開催場の違いを無視してボートNoやモーターNoを比較すると、場の影響を機材の癖だと勘違いしてしまう可能性があるからです。
今後は、場ごとに分けて見る必要がありそう
今回の結果から考えると、チルト研究は次のような順番で進めるのが良さそうです。
- まず、開催場ごとのチルト分布を見る
- そのうえで、同じ場の中でボートNo別・モーターNo別に比較する
- さらに、チルトを上げたときの着順傾向を見る
いきなり全国横断でボートNoやモーターNoを比較すると、かなり危険です。
たとえば「江戸川のモーター56番」と「住之江のモーター56番」は、番号が同じでもまったく別のモーターです。
さらに、同じチルト設定でも、場によって意味合いが違う可能性があります。
つまり、チルト研究では、まず 場を分ける ことが重要になりそうです。
今回の集計データについて
今回の記事では、昨日までの直近1年間を対象に、ボートNo・モーターNoごとのチルト設定傾向を集計しました。
集計では、各出走データに含まれる開催場、ボートNo、モーターNo、チルト設定をもとに、全体分布および開催場別の傾向を確認しています。
なお、ボートNo・モーターNoは全国共通の番号ではなく、各ボートレース場ごとに管理されている番号です。
そのため、たとえば同じ「モーター12番」であっても、開催場が違えば別のモーターとして扱う必要があります。
今回の研究でも、ボートNo・モーターNoを単独で見るのではなく、開催場ごとの傾向に注意しながら集計しています。
ファイル名: boatkun_tilt_by_boat_motor_202506_202606.xlsx
このデータは、あくまで過去データを集計した結果であり、今後のレース結果やチルト設定を予測するものではありません。
また、チルト設定には、開催場の水面特性、選手の調整方針、モーターやボートの状態、枠番、気象条件など、さまざまな要素が関係していると考えられます。
そのため、本記事では「このボート・モーターならチルトを上げれば有利」といった単純な判断ではなく、チルト傾向を観察するための参考データとして扱っています。
まとめ:チルト研究の入口は、機材ではなく水面だった
今回の集計で見えてきたことは、かなりはっきりしています。
チルトは、ボートやモーターの個体差だけで見る前に、まず開催場ごとの傾向を分けて考える必要があります。
全体では -0.5 と 0 が大半を占めています。
しかし、開催場別に見ると、江戸川のようにチルト0.5以上が非常に多い場もあります。
一方で、住之江・戸田・桐生のように、チルト0.5以上がかなり少ない場もあります。
この差を無視してしまうと、機材の癖を見ているつもりが、実は開催場の傾向を見ていただけ、ということになりかねません。
今回の結論を一言でまとめるなら、こうです。
チルト研究の入口は、機材ではなく水面だった。
ここから先は、開催場ごとの違いを踏まえたうえで、ボートNo・モーターNoごとの傾向をもう少し深掘りしていきたいと思います。

コメント
コメント一覧 (2件)
ご無沙汰してます。ふくちまです。
積極的な更新、毎回楽しみにしています。また自分のXにもたまに転記させてもらっています
そして今回の記事も・・Xにと思ったのですが・・
少し気になる点がありましたので、コメントさせてください。
実は「江戸川」というのはかなり特殊なんですが、その中で「進入ルール」も特殊ルールがあるんです。
建前上は「自由に進入枠を取れる」のですが「実情は選手道+場の指示」で全レース進入固定なんです
ということは「チルトをはねても外枠にならない」事が保証されている・・んです。
できましたら「一度データで江戸川の進入が変化したレース」を調べるといいかもしれないです。
「進入コースが変わらない」からこそ「チルトを自由に変えられる」のは江戸川だけなんです
ふくちま様、コメントありがとうございます。
江戸川の「進入ルール」については、たしかに水面特性だけでなく、レース場ごとの運用・文化として見るべき重要な視点ですね。
今回の記事ではチルト傾向を大きく見ましたが、今後は江戸川のような特殊な場を切り分けて見ると、より面白い分析になりそうです。
貴重なヒントをありがとうございます。